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第79回日本癌学会学術総会を2020年10月1日から3日にかけてリーガロイヤルホテル広島とメルパルク広島を会場に開催いたします。広島での開催は1999年以来21年ぶりとなります。被爆75周年の節目の年でもあり、平和な世界の実現という目標をあらためて共有したいと思います。
日本癌学会はがん研究の発達を図ることを以って目的としており、最終的に目指すものはがんの制圧です。一方、がん研究を通じて生み出された新規技術や明らかにされた事象、様々な生命現象の機構解明などが、がん以外の領域に与えたインパクトは誇るべきものです。研究成果を社会実装することの重要性は言うまでもありませんが、それに偏った中期的成功を過度に追うことを慎み、持続可能な科学の発展を導く責務があると思っています。
私が大学院生として研究をスタートした1980年代初頭にヒトがんにおける遺伝子解析が始まり、10年後にはその制御メカニズムの一端が解明され、さらにがん細胞をとりまく環境の重要性が明らかにされました。2000年前後にはゲノム解読が進み、網羅的解析法により飛躍的に多くのことが見出されてきました。非翻訳RNAの役割、がん幹細胞の意義についての研究も進んでいます。2010年以降のNGS解析は遺伝子パネル検査としてゲノム医療につながり、がん免疫機構の解明は革新的な治療薬開発によりがん薬物療法のひとつの主役になっています。がん研究・がん医療におけるデータの統合と応用においてAIが活用されています。現時点では、いずれも完成型ではなく、その成果の検証と課題の整理、今後の改善に向けた計画の策定が必要です。
第79回学術総会のメインテーマは「がんの実像を見つめて共に歩む」としました。がんを制圧するためには、病理学的観察をはじめゲノム科学を含むすべてを包括してがんを捉え、さまざまなレベルでの協働、すなわち基礎と臨床、分野横断的アプローチ(異分野・多分野融合)、人とAI、アカデミアと産業界、survivorとscientistの協働が重要です。本学術総会では、がん研究において“がんの実像を見つめて共に歩む”ことから得られる成果を提示し今後を展望したいと考えています。
尚、「感染防止・参加者の安全の確保」と「より充実した学術発表・情報交換の場の提供」の観点から、会場参加には人数制限を設け、WEB配信を併用して開催いたします。
本総会を通して、がんに係る理解が広く進み、がん制圧への大きな一歩になることを期待しています。